【短編】私vs国連~大怪獣の足元で~
「……いや、実に平和な光景ですな」

 スクーターの音と、のんびりした声に振り向けば。

 ようやく来た新聞屋が、ヘルメットに軽く手をやり、私にあいさつをした。

 今日は晴天なのに、雨使用のビニールに包まれた新聞紙を私に手渡し、楽しそうに、笑う。

「おかげで、僕の担当地区は、海水にぬれても良いように。
 いつだって雨降り用の、ビニールまきです」

「私の怪獣のために、お手数をかけて、すみません」

 毎日、毎日かけさせてしまう手間を考えて、思わず頭を下げると。

 新聞屋は、大したことないですよ、と笑って言った。

「それよりも……テレビかなんかで、ニュースを見ましたか?
 ……新聞の見出しにもなってるんですが、ね」

 今まで笑っていた新聞屋が、少し眉をひそめて私にささやいた。

「……本当に、国連軍がここにやってくる、って話ですよ?」

「うぁ……とうとうマスコミまで嗅ぎつけましたか」

 数日前の実験でテレビを壊して以来、世間の情報にはめっきり疎い。

 新聞屋から初めて聞いた情報に、私はアタマをがしがし掻いた。

< 6 / 21 >

この作品をシェア

pagetop