【件名:ゴール裏にいます】
彼女の唇が僕の肌で弾ける音が聞こえてくる。

僕は片手でテレビのリモコンを操り音量を落とした。画面ではジャイアンツの二番手投手がゲームを台なしにしているところだった。

「あ・・」

彼女の執拗な舌の動きに思わず声を漏らす。

「ふふ・・感じるんだ・・」

上目使いで僕を見る彼女に返事を返さず、代わりに彼女の髪を指で梳(す)いた。

その手で彼女のうなじをくすぐり背中を愛撫してゆく。背中から腰を経て僕は彼女のたった一枚残された下着の後ろからその手を潜らせて、熱く湿った部分を指で触れた。

ピクンと身体を緊張させた後、彼女は僕の指の動きに合わせ、徐々になまめかしく身体をくねらせる。

胸の上を這わせていた彼女の舌は僕の唇を求めてはい上がり、荒々しく僕の舌を犯してくる。

それでも僕は指の動きは止めなかった。次々に溢れ出てくる彼女のそれを指で掬(すく)い、敏感な部分を擦った。

「んんっ・・」

激しく、優しく、彼女を愛撫する。

「あん・・ゆうじくん・・あたし・・」

僕の唇を開放した口からせつなそうに言葉が漏れる。そして、

「ダメ!――っちゃう!」

悲鳴にも似た声を上げ、短い爪を僕の肩に食い込ませてくる彼女は、ブルッブルッと身体を震わせた後にガクリと全身の力を開放させた。






「・・沙希ちゃん?」

僕に身体を預けたまま気を失ったように動かない彼女。

「沙希ちゃん?」

「うん?勇次くん・・あたし・・」




「大丈夫・・ですか?」

「うん、ごめん。あたしやっぱお風呂入って来るね。ベット行ってて・・寝ちゃったらやだよ・・?・・後でね・・」

フラフラした足取りで脱ぎ捨てた自分の洋服を拾いながら浴室に向かう彼女をソファーの上から見送った。

テレビ画面は黄色と黒のユニホームを纏(まと)った選手がヒーローインタビューを受けている様子を伝えているところだった。

(サヨナラ負けかよ・・)

贔屓(ひいき)にしているチームが負けるのを観るのはやり切れない。それは野球もサッカーも同じだ。

僕はテレビのスイッチを切り、寝室へと歩いた。




パジャマ代わりのスェットパンツの前を膨らませたまま――。

< 140 / 202 >

この作品をシェア

pagetop