スカーレット
答えに困る。
「先生に相談したいことがあるんですが、どっちになるんでしょう?」
そう言って保険証と診察券を渡した。
お姉さんは慣れたようにパソコンを操作する。
「7月に精神科で診察を受けられていますね。二階に上がって25番の診察室になります。お呼びするまで二階の待合室でお待ちください」
番号札を渡され、私は二階へと上がった。
総合病院というだけあって広いし人も多い。
25番の診察室は二階の端にあり、他の診察室に比べれば割かし順番を待っている人は少ないようだ。
隣の内科のエリアには年を召した男女がうじゃうじゃと座っているのに。
私の番号が呼ばれるまで20分ほどだった。
「こんにちは」
私が部屋に入ると、40半ばくらいのおじさんがにっこりと笑いかけてきた。
「十和田さん。今日は顔色がいいですね。どうぞ、座って」
以前の私はどれだけ顔色が悪かったと言うのか。
「あの、すみません。私、以前の記憶がないんです……」