甘い夏 煙草の匂い
すっかり元気がなくなった社長は、背もたれから体を起こし、グラスに口をつける。
退院したばかりの社長のグラスには、ウーロン茶が入っている。
「社長…。」
「なんだ?」
「社長は、なぜ真那を引き取ろうとしたんですか?」
以前から聞いておきたかった事。このタイミングで聞く事じゃないかも知れないが、なぜか口から出ていた。
「早く家族の元へ帰れと諭すのが普通だと思いますが…、なぜ自分が家族になろうと思ったんですか?」
「…今度は、私が取り調べを受ける番か?」
腕時計をチラ見し、また背もたれにもたれた。
「その話はまた今度な…。これ以上に暗くなる話は…今夜は避けたい。」
…なんなんだ。余計気になるじゃねぇか。
「時間を作らせて悪かったな。んじゃ、そういう事だから、よろしく頼む。」
店を出て別れる前に、ふと思いついた事があった。
「そういえば、今日、倉島さんに会いました。」
「…倉島?」
「えぇ。社長の事を気にしてましたよ。」
「倉島か…。どんな感じだったか?」
「え…?どんなって…普通でしたよ?」