甘い夏  煙草の匂い



高速を降りてしばらく走ると、見慣れた街並み…。


確かこの辺りに…あった。


古ぼけた小学校の職員用駐車場で車を停めた。


「お前なぁ…人の心配より自分の心配しろよ!」


真那に体を向き直し、説教の体制に入った。

少々声が大きかったか…ビクッとしたまま返事も返って来ない。


「そんなんでフラつくような仕事はしてねぇよ…。

そんな事より、お前の方が心配だよ!

変な男に待ち伏せされて、襲われたらどうすんだ?!」

「…。」

「お前は何でも一人でできると思ってんだろ?

こんな世間知らずで、こんなちっこい体で、こんな細い腕で…」


胸の辺りで宙ぶらりんになっている腕を、グッと掴む。


「…何ができんだよ…。」



真っ直ぐに真那を見つめる。

真那も動けずに、真っ直ぐ俺の目を見ていた。


「…何かあってからじゃ遅いんだ。頼むから、少しは俺の言う事を大人しく聞いてくれ…。」


今すぐに抱きしめて、腕の中に閉じ込めたい…だが、微動だにしない真那の瞳から、目をそらせずにいた。





< 83 / 206 >

この作品をシェア

pagetop