あまーいお時間
いつもならすぐに
着くところなのに。
こんなにも遠く
感じてしまう。
まるで私と
あなたのように‥。

目からは涙が溢れる。
悲しくない。痛くもない。

胸が苦しい。この苦しみ、
あなたじゃなきゃ
とれないの。


本屋さんに着き
すぐさま店内に入る。

「‥っはぁ‥はぁっ」

息が上がって、うまく
声が出せない。

「ゆ、ゆ‥っう‥きさん‥」

やっと出せた声も
消えそうなほど小さい。

「ゆう‥き?
あぁ、バイトの
あんちゃんか。
さっき帰ったよ」

礼を言わず
自転車にも乗らず
私はすぐさま走った。

‥いない。

いないよ、おじいさん。

周りの人が冷たい目で
見てくる。
でもそんなの気にしない。
それどころじゃないの。

「‥ゆ、ぅき‥さんっ‥」

涙はどんどん溢れるばかり。
もうわけがわからない。

しゃがみこんでいた
その時―――‥


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