Chain〜切れない鎖〜
だけど一馬は笑わなかった。
フェンスから身体を離し、ゆっくりと華に向かって歩き出す。
その重くて強い足音を聞いて、不良たちは後ろを振り返った。


表情一つ変えず、華に歩み寄る一馬。
華は逃げようとしているが、腰が抜けてしまって動けない。



不良たちはそんな一馬に後退りして道を開けた。

その間を通る一馬は、王者ともいえるオーラを放っていた。





やがて一馬は華の前に腰を下ろす。


「東條。絶対店手伝いに戻るから。
…だから先帰れ」

華はやっと腰を持ち上げ、一目散に駆けていった。
あたしなんかにわき目もふらず。
自分自身が逃げることで精一杯だったんだ。




華は心に深い傷を負っている。
普段はあんなに明るいのに、不良たちの前では別人になる。
それはあたしと一緒。

目の前に群がる不良たちに腹が立って、知らず知らずのうちにあたしは睨んでいた。

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