鏡の中のアタシ。
刺客とアタシ。

明日香の策士っぷりは、なかなかだった。


あの日あの場に雄也がいなかったのは、本当は明日香に気を使ったからなんかじゃない。


大地が間違えてしまったのは、やっぱり明日香の悪知恵のお陰様。

『雄也サンね、明日香に行かないよ。って言った…。』

少し困惑気味の表情を浮かべて、今にも消え入りそうな声で話をして、うつむいてみせる。

『明日香が、聞かなきゃ行くって行ったかなぁ…。はぁー…』

次は、自分のせいで…。と言わんばかりの後悔たっぷりの顔をし、上ずった声で少し早口めに話をしてから、ため息をつく。

『本当…は、雄也サン…、行きたかったんじゃないのかなぁ…?』

最後に、大地の顔を見上げ、心細さを感じさせる声で、ためらいながらも、少し首を傾げて意見を乞う。


そんな風に雄也の様子を聞かされた大地。
大地は、明日香がブリッコな事をよく解っている。
上目遣いに、クラッと…。
なんて事は有り得ないが、明日香のする話は、情景を浮かべやすい。
そこにさらに、明日香の声色や表情が加わると、ウソをついているなんて、思えなくなる。


< 167 / 247 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop