鏡の中のアタシ。
「アタシ、変わりたい。」
「急になによ…」
ちゃかしかけた美緒だったが、里菜の表情が真剣な事に気付き、黙って座りなおした。
「…正直まだ好きとかはよくわからないんだけど、このままじゃいけない気がするの。偽って誰かと付き合ったってよくないと思ったんだ。色々あったんだけどね、相手だけじゃなく、相手のまわりまで傷つけちゃう気がして…。」
「雄也と真剣に向き合ってみる事にしたわけだ?」
里菜がそこまで話すと、優しい顔で美緒が話し掛けた。
「うん。偽らないでいたいって思って…」
「いい事だと思うよ」
美緒が賛同してくれて、里菜はほっとした。
「それで、いつ話そうと思うの?」
「え…?」
里菜は、美緒のいきなりの質問がよくわからなかった。
「頑張って、“清純派理緒”を本物にするから、美緒、応援してねっ!!」
質問はよくわからなかったものの、ちゃんと最後まで報告しようと思い、力一杯宣言した。
「………里菜…」
美緒は、何かいいかけたが、そのまま言葉を飲み、苦笑いで応えただけだった。
この時里菜は、美緒の気持ちには気付いてなかった。
「あーっ、美緒に言えてよかった♪」
2人が乾杯したグラスには、すっきりした顔をして笑う里菜の横で、少し切ない顔をする美緒の顔を、対照的にうつしていた…。