鏡の中のアタシ。
「あ♪」
里菜が、露店を見付けてしゃがみこむ。
雄也は、その少し後ろでその無邪気な姿を愛しむ。
「どれがぃぃ?」
「え…」
「買ってあげたいからいいの、選んで?」
突然斜め後ろからの言葉に遠慮がちに振り向くと、雄也は、にっこり笑いながら一緒に露店に並ぶアクセサリーを選んだ。
「じゃあこれ☆」
里菜が選んだのは、小さなハートが連なるブレスレット。
雄也につけてもらい、ずっと大切にするね!と笑顔で感謝を伝えて、また手をつなぎ歩こうとした。
「………っ!!!」
「…里菜?」
突然止まって青い顔をして立ちすくむ里菜を、不思議そうな顔をして雄也は覗き込んだが、里菜の目は雄也を映してはいない。
数メートル先に立つある男、ただ一人を見ていた。
そしてその男もまるで汚いものでも見るかのような目で、苦い顔をして里菜を見ていた。