地味なあたしと不良軍団
*
「依奈ちゃん、」
「…なに」
鼻声でかえせば、大地は無表情で彼女の頭を撫でる。
「本当は泣かせるつもりじゃなかったんだけど、」
大地を見上げた。
恵美と似ている。
少しだけ安心してしまったのに後悔してから静かに口を開いた。
「大地くんと婚約するとかいったあとに言うのもあれなんだけどね…」
この場に本人がいればどう思うだろう。
「あたしは、やっぱり奏くんが好きだよ。」
抱き締めてくれる?
また、キスしてくれるかな。
「それでも、いい?」
「それ、こっちのセリフ。」
ぎゅ、
抱き締められた腕が温かい。
「好きだよ、依奈ちゃん」
大地の声は震えていた。
「…大地くん、」
「…」
「奏くんを、忘れさせてくれますか。」
不自然に敬語になった。
心臓が脈打つ。
「うん。」