桃太郎【Gulen】


「参る!」


 今度は桃太郎が、攻める番だった。


 地の利、体格、力、速さ。


 全てが、ヤマタノオロチの方が上に行く。


 それでも、オロチに勝ることがあるとすれば、桃太郎の練習相手が金太郎だったというコト。


 力や体格では絶対に勝てない金太郎相手に、勝つ方法を桃太郎は五万と知っている。


 その大半が、唯一の『速さ』を生かした勝負法なのだが、中にはその『速さ』を殺されてしまっても勝てる方法があるのだ。


「ぐっ!」


 桃太郎は、姿勢を極端に低く構えると、そのまま突進する。


 狙うはあくまで足。


 しかし、そんな突拍子もない作戦、オロチには見えていたのか、軽々とジャンプして避けられる。


 それが、甘いというのだ。


 桃太郎は、オロチがジャンプした瞬間、地面すれすれに足を落とし、地面と腿をこすれるようにして方向転換をする。


 見るのはあくまで影。


 人は空を飛べない。


 当たり前の法則だが、ジャンプしたオロチは、必ず地面に下りてくるのだ。


 そこを狙う。


 桃太郎は影に向かって剣を突く。


 しかし、オロチはさらにその上を行った。


 桃太郎が突いた剣を足ではじいたのだ。


 あまりの衝撃で、横に転がる桃太郎。


 剣を手放さなかったのは、武士の意地。


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