かえりみち
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手術中のランプはまだ、ついたままだ。
由紀子は手術室の前のソファに深く腰掛けていた。
思い切り泣いた後のどっとした疲れが、由紀子を包み込んでいる。
卓也は、背中合わせに置かれたソファに背中合わせに座っている。
後ろ向きなのでよく見えないけど、さっきから、身動き一つしない。
何を考えてるのかしら、この子は今。
高ぶった感情が落ち着いていくのと同時に、今度は恥ずかしさがこみ上げてきた。
あぁ、私ってば。
またやっちゃった。
とんだヒステリー女だと思ってるだろう。
顔を合わせば、泣きわめいたり、ひっぱたいたり。
でも・・・
由紀子が顔を上げた。
よかった。生きててくれて。
おかげで、あなたに謝れる。
「・・・昨日は、ごめんね」
「・・・」
卓也が首を横に振ったのが、見えなかったけど分かった。