かえりみち



悲しそうな笑みをたたえた由紀子を背に、卓也は無意識に膝の上の拳を固く握っていた。

-ママ、泣かないで。
そんな風に苦しまないで。
こんなことのために、僕はいなくなったんじゃない。


「…歩くんは。そんなつもりで死んだんじゃありません」

いつになく、はっきりとした口調だった。


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