かえりみち

次の日は朝から、今にも降り出しそうな、どんよりとした曇り空だった。

レースのカーテンを通して差し込む外の光はやはり弱々しく、リビングは薄暗い。

由紀子はそのカーテンのそばに佇み、ぼんやり外を眺めていた。

昨日、少し動きすぎたのかしら。
体がすごく重く感じる。
息をするのも、つらく感じる・・・。

成長を始めた庭の草木に当たる雨音に気づいた頃には、外のウッドデッキは雨に濡れて、完全にしっとりとしたこげ茶色に変わっていた。

やだ、雨が降ってる。
洗濯もの、外に干してたじゃない。

外に出ようと窓を開けると、湿った雨と土の匂いが部屋に入り込んだ。

「あの時」と同じ匂いだ・・・

ふいに、自分を見上げる歩の、うるんだ瞳が脳裏に浮かんだ。


< 75 / 205 >

この作品をシェア

pagetop