Memory's Piece

※※

買い物袋を両手にぶら下げて、二人で笑いながら雑踏の中を歩く。

街頭からぶら下げられた南瓜や、道路の真ん中に立っている謎のピエロ。

一つ一つが何故だか気分を高揚させていく。


「桃亜姉、飲み物買ってくるからちょっと待ってて。」


興奮で渇いた喉の為にと近くにある自販機に走りながら、ボクは桃亜姉に手を振った。

突然走りだしたボクに「しょうがないわね」という風に苦笑しながら桃亜姉が近くにあったベンチに腰掛けるのを横目で確認しつつ、無駄に種類の多い自販機に指を滑らせる。


「どーれーにしよーかなっ♪と~」


よくある神頼みの歌を口ずさみながら、オレンジジュースにするかお茶にするか真剣に考えつつボクはボタンに手を伸ばした。

気分的にはオレンジジュース。でも何となくお茶も飲みたい。

早くボタンを押せと言わんばかりに赤く光るボタンを真顔で見つめながら、えいっと二つ同時にボタンをプッシュ。

ガコンッと重い音を響かせて出てきたのは、鮮やかなオレンジ色の液体の入ったペットボトルだった。


「オレンジかぁ。」


妙な落胆と少しの安堵を含んだ呟きをこぼしつつ、桃亜姉用にリンゴジュースも購入してボクは一口オレンジジュースを口に含んだ。

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