Memory's Piece

「それはボクの名前であって、質問の答えじゃないな。はい、頼兎くーん?日本語分かるかなぁ??聞こえてるー??な・ん・で、こんなとこにいるのかなぁ?」


コツコツと頼兎の頭をノックしながら問い掛けると頼兎は途端にムスッとした顔になって「別に何処にいたっていいだろっ」と顔を背けた。

まぁ、なんてゆーか、いちいち可愛い反応だな男共は。


「ミケ、乱暴しちゃダメじゃない。彼怪我してるのよ?」


「あんなのかすり傷だよ。手に穴が開くくらいなんだっていうの」


「それはアンタの常識であって、一般人の常識じゃないわ。手に穴が開いたら普通は大怪我よ」


めっ!とボクに注意する零一に「はいはい」とおざなりに返事をしたボクは、ボックスを出して中から傷薬を取り出す。

頼兎の鼻を摘んでやって、酸素を求めて口を開けた瞬間に手早く薬を口の中に流し込むとボクは瓶をポイッと放り投げて零一を振り返った。

『これで良いんでしょ?』と目配せすれば満足そうに零一が微笑む。

余談だが、この傷薬、飲んでも傷にかけても傷が治るというつわものだ。

飲んだ方が治りは早いけど、かけるだけでも充分早いから神懸かり的苦さとまずさを誇るこの薬を飲む奴はほぼばいない。

というか飲んでる奴を見たことがない。

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