Memory's Piece

思い出すのは昔のこと。

独りぼっちだと目を真っ赤にして泣いたり、お父さんと新しいお母さんが怖いと震えながら私に抱き着いたり。

なのに私は、あの子の辛さを知ってながら何も出来なかった。

仕方がないことだったって『サナギ』は言ってくれたけど、それだけじゃ割り切れない。

そんな言葉では許されない。


「ん?どうした?サフ」


過去の葛藤と戦っているとうーくんの戸惑った声が唐突に聴こえた。

さかんにうーくんの袖を引っ張って注意を引こうとしてる青いぬいぐるみみたいな子が、目をキラキラさせて、通り掛かったハロウィンの山車を指(腕?)を指している。

どうやら近くで見たいらしいと察したうーくんは、「ダメだ、サフ。桃亜さんから離れる訳にはいかない」と子供を叱るお母さんみたいに言った。

なんだか微笑ましい光景に笑みが零れてくる。


「うーくん、私は大丈夫。斑と揚羽がいるもの。」


私の言葉に反応した番いの蝶が返事をするように羽を羽ばたかせる。

私の武器。相棒。守り手。監視役。

どの言葉もこの蝶達にはピッタリ。

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