そこは、まるで。
「ん…ちょっとね…」

誤魔化すように笑うお母さんを制止するお父さんの手が、震えてた。

「珠貴、いなせに話そう…」

その瞬間、ただならぬ雰囲気を感じて背筋が伸びる。

何かが起きてる。

心臓がバクバク音を立てて、頭に血がのぼる。

「でも治彦!!いなせには関係ないじゃない…もう過ぎた話だよ…いなせ…かわいそうじゃない!!」

「大丈夫。いなせは頭がいい。ちゃんと判断もできる。」

お父さんのその言葉に、泣き崩れたお母さんを見ていられなくて、目を逸らした。
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