―White Memory―
しんしんと静かに、だけど着実に降り積もってゆく雪。
ゲレンデを照らすライトアップが、パウダースノーをキラキラと、まるで宝石のように輝かせる。
…なんてロマンチック。
ただし、これが缶ビールじゃなくてカクテルだったら、の話だけれど。
「堀口くんは?飲まないの?」
「飲んだよ、十分。」
「そのわりには普段と変わらないね。」
「そう?」
思えば、灯吾と二人きりで話したのはこれが初めてだったかもしれない。
あたしたちは仲良かったけれど、個々で行動する事はなかったから。
そして屋根のあるテラスに寄り掛かり、灯吾は言った。
「誰かひとりくらい、まともなヤツが居なきゃ困るだろ。」
彼の視線の先を追えば
コテージの外に漏れるくらい、奇声をあげて騒ぐみんなの姿。
「…確かに。」
あたしはそんな灯吾にくすくすと笑った。
だけど、笑顔は続かない。
胸に突っかえるモノが
缶を握るあたしの手を力ませた。