―White Memory―
風が裸の木々を揺らす。
冬の木漏れ日はこんなにも暖かいのに、あたしの心は凍ってしまってるみたい。
たった一年。
だけど、その中でも数え切れない程二人の思い出はあって。
ケンカして泣いた夜も
仲直りした電話も
あの、クリスマスの事も。
――灯吾は
何も覚えてないんだ。
「…ねぇ、聖華。」
静けさの中、美貴は気遣うようにあたしの肩に手を置いた。
「ちょっと疲れてるんじゃない?」
休んだ方がいい、と言われあたしは小さく首を振る。
「…大丈夫。」
「大丈夫じゃないよ。その様子だと寝てないんでしょ?」
「……そんな事、」
確かに、美貴の言うとおりだった。
事故に遭ったあの日から、灯吾が目を覚ますまで眠れないくらい不安で。
だけど、目を覚ました後の方が余計にあたしは眠れなくなってしまった。
忘れられてしまったあたしたちの思い出。
灯吾の記憶から抜き取られた過去。
一人じゃ持ち切れない思い出に、あたしは押し潰されてしまいそうだった。