―White Memory―
毎日毎日、思い出してもらおうと灯吾の病室に押しかけて。
思い出してもらえない事にまた落ち込んで。
焦る自分と諦めにも似た感情が、あたしを急かすように胸を掻き立ててゆく。
だけど灯吾は優しいから。
記憶を失っても
灯吾は灯吾のままだから。
「…ごめんね、思い出せなくて……。」
そう謝られる度
打ち付けられた体以上に、胸の奥が痛んだ。
無理に思い出そうとしなくていいよ。
ゆっくりでいいから、なんて
そんなことを言える出来た彼女にはなれなかった。
早く、早く。
あたしを思い出して。
二人が過ごした日々を。
忘れないで―――。
そんな日々は
今日でもう二週間が過ぎた。
でも灯吾が思い出す様子は全くない。
先生は言った。
『ふとした瞬間に思い出す事もあります。でも、全く思い出さない事もある。』
なら、あたしは。
あたしはこれから先
何を頼りに生きていけばいいんだろう。
何を支えにしていけばいいんだろう。
灯吾にまた最初から愛される自信なんてないのに。