―White Memory―
ぽたりと頬を滑り落ちる雫。
大丈夫、と言い張りながらも次々に零れる涙を止められなかった。
そんなあたしを見て、美貴は手を握りしめ、優しい声色で言ってくれた。
「聖華。やっぱり休んだ方がいいよ。」
「…でも、」
「そんなんじゃ、灯吾くんが思い出した時に聖華がダメになっちゃうよ?」
「………、」
「灯吾くんの事なら、あたしやみんなに任せておいて。」
ね?と念を押され
あたしは泣きながら頷いた。
…そうだ。
こんなんじゃ、灯吾もあたしもダメになってしまう。
灯吾だって記憶を失って不安なんだから。
あたしが、しっかりしなきゃ。
今、あたしがしてる事は
記憶のない灯吾を追い詰めてしまってるだけ。
大丈夫。
きっと
灯吾は思い出してくれるよ。
あたしたちの過ごした一年は、そんなたやすく消せるモノなんかじゃない。
消えたり、しないんだから。
「…ありがとう、美貴。」
「ううん。早く思い出してくれるといいね。」
「…うん、」
――頑張ろう。
自分の為にも
灯吾の、為にも。