心の距離
「…何か怒ってます?」

歩きながら不安そうに聞いてくる彼女に、小さく呟くように答えた。

「いや…ごめんね。空気台無しにして…」

「ううん。…こっちこそごめんね。いきなり…」

言いかけた言葉を飲み込み、うつむく彼女。

徐々に赤くなっていく彼女の顔に、自然と笑いがこぼれ落ち、思い切って切り出した。

「こ…今度の金曜の夜って暇かな?肉じゃがの約束守ってくれたから、食事の約束守りたいんだ」

「うーん…木曜からお盆休みだから、実家に帰るんですよね…日曜の夜なら都合良いんだけど、翌日仕事だし…」

「その翌週は…無理か」

『向こうに引っ越さなきゃいけないから』

言葉を飲み込み、ため息をついた。

「焦る事無いですよ。時間はいっぱいあるんだし」

ニッコリと笑いながら告げる、何も知らない彼女。

全てを話してスッキリしたい。

全てを話すと、彼女と離れるのが今以上辛くなる。

彼女の少し後ろを歩きながら、頭の中で葛藤する、二つの強い気持ち。

「田辺さん?」

彼女の声で我に返ると、そこは彼女のアパートの前。

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