心の距離
「あ…ごめんね。考え事してた」

「いえ…何でも相談に乗るんで、そのうち話して下さいね。じゃあ、また明日」

赤い顔をしながら僕に告げると、彼女はアパートに駆け込んだ。

…ことみちゃん、顔赤かったな。どうしたんだろ?…

部屋に入ってしまった彼女に聞ける訳も無く、ため息をつきながら踵を返した。

コンビニに寄った後、真直ぐ帰宅すると、エレベーターの前にヒデが腕を組んで立っていた。

「聞いても良いか?」

睨み付けながら聞いてくるヒデ。

「何?」

「ことみと二人っきりで何してた?」

「…話してただけだよ」

「本当にそれだけか?」

「ああ」

「…ことみの事、どう思ってる?」

「どうって……すげぇ頑張り屋だなって思ってるよ」

「本当にそれだけか?」

「急にどうしたんだよ?」

「真理子さんから、お前とことみが『肉じゃがの約束してた』って聞いてさ、すげぇ妬いた。…俺が本気でことみを口説いても問題無いか?」

「梨恵どうするんだよ?…大体、社内恋愛禁止だぞ?」

「梨恵は俺から振る。会社の問題はバレなきゃ良い。バレたらことみを辞めさせる」

「…身勝手過ぎだろ?」

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