心の距離
ゆっくりと給湯室に入り、小さく深呼吸をした。

「あの…」

緊張のせいで声が裏返ってしまう…

「あ、お疲れ様です!食事行かなかったんですか?」

「いや…これから行きます。あの…夕べ約束した食事…来週の金曜とかどうですか?」

「うーん…第2金曜は美優の所泊まりに行くんだよなぁ…友達に断って良いか聞いてみますね!」

「いや、先約あるなら良いですよ。その次の週は?給料後だし…」

「…ごめんなさい。その日も先約が…でも、断ります。ちゃんと断らなきゃ…」

急に暗い表情になった彼女。

「…もしかして、昨日言ってたサトくんって奴ですか?」

名前に反応するように、黙ったままうつむき、口を閉ざした彼女。

…やっぱり答えてくれないんだ…

「き…今日とかどうですか?」

空気を変える為に告げた言葉は、彼女を更に困らせてしまった。

「…すいません。仕事が何時に終わるかわからなくて…早く終わらせるように努力しますけど…凄く遅くなるかもしれないんで…」

「…そうやって嘘吐くんだ。…行きたくないならハッキリ言えよ。…無駄に期待させないでくれ」

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