心の距離
少しだけ赤く腫れてしまった彼女の唇を見ると、嬉しさの余り、思わず噴き出してしまった。

「唇、腫れちゃったね」

少し照れながら微笑む彼女。

深呼吸をしながら仰向けになり、大きく伸びをした。

僕の胸に頭を乗せ、小さく告げてくる彼女。

「…瞬くんの心、優しい音がするね」

「ことみちゃんは?って触っちゃダメなのか…」

伸ばしかけた手を隠すと、彼女は小さく笑いはじめた。

「ホント、瞬くんの理性の強さには感心する。精神力が強いんだね。羨ましい…」

「…臆病なだけだよ。罰が怖いからね」

「そんな事無いと思うよ?社長がべた褒めしてたもん。瞬は、ヒデとは違って筋の通った男だって。社交性は無いけど、瞬みたいな奴が現場監督勤めたら、安心して事務に専念できるって言ってた」

「そうなんだ。社長の期待を裏切らない為にも、バレないようにしなきゃいけないね。キスした事…」

ニッコリと笑いながら小指を差し出す彼女。

彼女の小指に小指を絡ませながら、優しく触れるだけのキスを送った。
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