心の距離

ため息を吐きながら更衣室に行き、春樹さん達と共に現場に向かった。

作業中も、彼女の寂しそうな表情が頭を駆け巡る…

重い気持ちのまま仕事を終え、報告書を提出しに事務所に入った。

…話しかけてあげなきゃ可哀相だよな…

ふと頭に過ぎった本音とは裏腹に、いつもは手渡している報告書を、彼女のデスクの上に置き、黙ったまま会社を後にした。

完全に避ける態度を取る自分と、朝から寂しそうな表情を浮かべる彼女。

帰宅後、頭に残る彼女の寂しそうな表情を洗い流すようにシャワーを浴び、耳に残る彼女の声をかき消す為に、彼女の働いていた騒がし過ぎるパチンコ屋に向かった。

店に入った瞬間、気まずそうな表情を浮かべる江川さんを尻目に、スロットコーナーに居るヒデを探し出した。

「あれ？珍しいな」

「…暇だったからな」

ため息をつきながらヒデの隣に座り、スロットを打ちはじめた。

彼女とはじめて会った当時とは、違う台の並ぶ店内。

しばらく打った後、メダルを流しに行くと、音の出ないパチンコ台も、大爆発したパチンコ台も消え、新しい台が並んでいた。

緊張しながら話しかけた事も、彼女のお陰で勝った事も、全部夢だったと思い込むには丁度良い現実。