問題アリ(オカルトファンタジー)
*





「…さま…、……フィン様!」



「……う、…」



「…如何されました?魘されていましたわよ」



何だここ。


目覚めたフィンの視界には真っ白のふわふわの毛並みと、上にも下にも真っ黒な絨毯が引かれていた。


それは月もない、海の上だった。


気づいて漸く、自分が英国へと向かっていることを思い出す。


時たま海面を蹴って速度を増すエレン。流石のエレンでも、数秒で着くことは出来ないらしく広い広い北大西洋の海の上を走っていた。


あの教会を出て暫く、時間にすれば数十分なのだが、その短い時間に、フィンは夢を見ていたようだ。


身体を起こして、呆然と暗い空を見上げながら、呟いた。



「エレン……思い出した」



「何をです?」



「俺の、過去」



「貧困街と、ケニスとかいう男の屋敷で過ごし、屋敷の人間と村一つを壊滅させたと言うお話ではなく?」



「俺、何人くらい殺したんだろ……屋敷の中でも30人くらい居た気がするな…村は、家の中にも入って殺してたからなぁ…4人家族として………15件くらい回ったのかな。貧困街ではもう、毎日の日課みたいに、殺してた…なぁ…」



力なく遠くを眺めてからポケットに入れていた柿の種を取り出して、見つめた。


あの皺くちゃの、柔らかい笑顔。柔らかい手。


フィンの記憶ではずっと、貧困街からケニスに捕らえられて、極度のストレスを受けていたある日、この屋敷中の人間をかくれんぼの最中に皆殺しにし、街もケニスの支配下であることから、片っ端から捕まるまで皆殺しにしていたと記憶していた。


強ち間違っていなかったが、決定的なものを欠いていた。





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