問題アリ(オカルトファンタジー)




「そっか……俺、味方が居たんだ…」



結局、力を欲して死神となり、フィンと言う名前を自らつけたが、何故力が欲しいのかがわからなかった。


ただ力が欲しい。そして、死神の中のトップに君臨するまでの力をつけたが。


あの木をそのままの形で残してあげることも出来なかった。


それどころか、グレタが守りたかった家族の間を荒んだものに変えてしまったのである。
そのときに気づいた。


自分が何故か欲していたその力は、何かを守るには無意味なものでしかないと。


ガチャン、と記憶の鍵が開き、何故自分が力を欲したのか、何故必要だったのか、グレタを見たときの、あの疑惑はなんだったのか。


その答えのすべてを、夢が教えてくれた。


残酷な真実。



「ジューンの記憶を、忘れるほど弱かったんだ、俺。ホントは、すげぇ、弱かったんだ。目閉じて、逃げてばっか。バカだ、バカだよホント、一番大切なもん、忘れてるなんてよ」



陸が見えてきた。


太陽はまだ昇らない。


エレンは走る。


どちらかが力尽きる前に。


海にはエレンが辿るその下にキラキラと光る白い粉が一本の線を引いていた。






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