問題アリ(オカルトファンタジー)
玄関の外から、ドスン、という重たい音が聞こえ、リオンはマントを翻しながらその扉を開けた。
「あ」、と後ろから息を呑む声が聞こえてもリオンはそれを黙殺して、目の前の真っ白い巨大猫を目を細めて見つめる。
力尽きたのか、どんどん小さくなっていくそれは、一匹のペルシャ猫に戻りもう人間の言葉さえ話せないほど疲弊していた。
それは同時に、持ち主の力が使い魔への魔力を与えることが出来ないほど弱まっているということだ。
エレンの背中でぐったりと力尽きていたフィンの手が弱弱しく、エレンの身体を撫でる。
「無理させたな、エレン……、また会おう…いつか……」
その言葉にミャア、と弱弱しく答えたエレンは、フラフラとフィンへと身体を擦り付けそのまま倒れた。
身体の中から眩しい光の丸い玉が浮き出て、空へと溶ける。
後に残ったのは白いペルシャ猫。
もう目を開ける気配もない、猫が一匹。そして。
「フィンさん…!どうしたんですか!?早く中へ…!」
「無意味だ」
その声にへへっ、と笑いながらフィンはその顔を頭上高くにあるリオンへと向けた。
リオンは微かに眉を寄せたいつも通りの無表情。それが苛立ちではないことは、なんとなくわかる。
駆け寄ろうとした身体をリオンに止められたチェスは『無意味』という言葉が理解できずにリオンを見上げる。
フィンは今、放って置けるような顔色ではない。
いくらリオンにとってフィンが不愉快な存在だとは言え、そんな感情を差し込む余地もないほどにだ。
ただでさえ白いその肌が恐ろしいほどに白くて、足が、粉に。サラサラとした、光の、粉に。
「ここでいいよチェス君…別れを言いに来ただけだから…」
「リオン、フィンさんを助けてあげてよ!この使い魔の猫だって…!魂を引き止めてよ!」
「何故だ?」