僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「お、はよう」
ドアを開けた途端キッチンに立つ人影を捉え、ドキンと胸が高鳴る。
「……おはよ」
金茶の前髪を邪魔くさそうにピンで止める彗が、キッチンで微笑んでいた。
ドキドキとうるさい鼓動が聞こえないか、心配しながらダイニングテーブルへ向かう。
「きょ、今日は彗が当番だったんだねっ」
鏡を見てくるんだったと後悔しながら髪を撫でつけていると、彗は手元に視線を落としたまま微笑む。
「……ううん。ホントは凪なんだけど、調子が悪いから」
代わりにやってるだけ。
朝が弱い彗の言葉に、少しだけチクリと胸が痛む。
「そうなんだ……凪、やっぱり具合が悪いの?」
「……駄々こねてるだけだよ」
やんわりと口の端をゆるめる彗は、やっぱりあたしには分からない言葉を使う。
あたしが捉える駄々と、彗が使う駄々は、全く別のものなんだろう。
そう感じとっても、あたしは聞けずにいた。
彗と凪の間には、きっと、絶対、誰にも入れない世界があると思っているから。