僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
しゃがみ込み、ジャージが入った袋を床に置く。足元に散らばった無数の長方形は、俺の胸を温かくもしたし、締めつけもした。
ひとつ手に取って、裏返す。
郵便番号、住所、そして――夢虹 凪。
幼い字で書かれた文字は少し色褪せていた。
離れてから始めた、文通。床に散らばったのは、俺が出さなくなってからも凪が出し続けた手紙だった。
流れていた洋楽がピタリと止まる。それが合図のように、俺は封筒の中から便箋を取り出した。
ひとつひとつ、なんとなくしか覚えていない順番を無視して、凪が綴った文字だけを読んだ。
――彗、げんき?
おじさんとおばさんとの暮らしはどうですか?
――彗、元気?
そっちも卒業式、終わった? 中学に入ったら、なんか部活する?
――彗、勉強ができないの。
中学の授業って難しくない? サヤに教えてもらってもダメなの。あたし、バカなのかな……。
――彗、彼女できた?
あたし、彼氏ができたんだよ!
――彗、あのね。
前の彼氏とは別れちゃったんだけど、サヤが慰めてくれたから元気になったよ。また、恋できるといいな。
――彗、携帯持ってる?
番号とメアド書いとくね。
――彗、元気かな?
手紙、面倒だったら言ってね。言ってくれないと、あたし出し続けるよ。
必ず、俺の名前から始まる手紙。毎回便箋2枚使って、俺のことや、自分のこと……そして時たまサヤのことも、便箋いっぱいに綴る凪。
……離れていても、俺は幸せだった。
文字から溢れる凪の温かさ。俺はそれに、救われていた。