僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「枢稀がスパルタなんだ!」


祠稀の家から逃げてきた理由は、それか。


ダイニングキッチンの椅子に座り、有須に淹れてもらった珈琲を飲むチカは、相変わらずフードのついたパーカーを着ている。


でも目印であったフードは、かぶらなくなっていた。


「だから言ったじゃねーか。枢稀は勉強については鬼だって」


祠稀はくつくつと楽しげに喉を鳴らす。


チカは受験生で、俺たちと同じ高校を受験するって騒いでいたけど……。


「合格圏内だって言ってなかった?」


俺の問いかけにチカは「そうだよ!」と声を張り上げ、頬を膨らませた。そんな姿を見てると、チカはやっぱり14歳なんだなと思う。


「僕、合格率Aなんだよ!? それなのにSまで上げろとか言ってさ、主席入学させるとか言い出すんだよ!」

「ぎゃっはっは! 何アイツ、最高だな!」

「笑いごとじゃないよ! どんだけ大変だと思ってんのさっ」

「ふふっ。お兄さん、チカのことかわいくて仕方ないんだね」


有須が笑うとチカはうぐっと口を噤む。分かってるんだけど、納得いかないんだって表情に俺までおかしくなってくる。


「ま、お前はほとんど中学行ってなかった分、内申書はよくねぇだろうからな」


ぽんと祠稀に頭を叩かれたチカはバツが悪そうな顔をする。


――祠稀が作った闇夜の威光は、未だに存在している。


チカは受験だなんだで、それこそ活動は控えているものの、祠稀が全てだった威光は変わりつつあるんだと言っていた。

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