僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
……彗がわざわざ迎えに行って、今も一緒にいるなんて。何かありましたーって言ってるようなもんじゃねぇかよ。
「サヤねぇ……」
好きだと気付いた時には既に恋人がいて、それでも好きで、でも結婚しちまって。それでも好き……愛してる?で、憎いって言ってごまかしてんのに会いに行くとか、意味分かんねぇ。
つぅか、抱かれてんだろ? 不倫じゃん? ……そんな恋愛して疲れねぇのか、凪は。
でも、例えば俺が、凪を好きだと気付いた時に凪に彼氏がいたら。
俺は諦めるか? 凪が結婚したら、諦められるか?
「……いや、そうなる前に奪うし」
「祠稀、独り言多い」
「聞こえてんのかよ」
ふたりで笑った時、ほぼ使ってない家の電話が鳴り響いた。
在るだけだった存在が機能したことに一瞬驚いたが、俺は立ち上がって有須を止める。
「いい、俺出る」
プルルルップルルルッと忙しなく鳴る電話機の受話器を取る。
「はい。えー……と、夢虹です」
一応、凪の親父が一緒に住んでることになってるからな。教師だったら面倒だと思いながら、セールスだったら即切ると考えていると、サー……と機械音だけが聞こえる。
「もしもし?」
悪戯電話か?と思った時、耳に微かな息使いが聞こえた。
『……もしかして、祠稀くん?』
聞き慣れない男の声。
俺は「誰?」と小声で聞いてくる有須に首を傾げる。