僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「……そうですけど、どちらさ、」
『わー! やっぱり! 彗の声じゃないから、そうだと思ったんだよ! ビックリしたぁーっ!』
言い終わる前に大声を出され、耳の奥だか頭の中でキ―ンと音がした。
「いや、すんませんけど、誰っすか?」
『あ、あぁ! そっかそっか、そうだよね! 電話越しで失礼だけど、初めまして。凪の父親ですっ』
俺は目を見開いて、顔が見えるわけじゃないのに受話器を耳から離して見つめた。
……凪の、親父!?
『いやぁ、急にゴメンねぇ〜。凪に急用の電話があったんだけど、携帯にかけても出ないからさぁ。凪、いるかな?』
親父にしては明るい声だと思うのは、自分の親父と正反対なのもあるだろう。でもそれがなくても、声から笑顔で話してるんだと分かる。
「あーっと、凪なら今出てて……彗と出かけてていないんすよ」
『あ、やっぱり? 彗にかけても出ないからさぁ、まだ寝てるのかなぁ〜と思って家にかけてみたんだけど、やっぱりいないんだね』
「すんません」
『あっはは! なんで祠稀くんが謝るの〜? 超ウケる!』
ちょ、超ウケる?
凪父の発言に呆気にとられていると、電話の向こうで悩んでるみたいだった。
「あの、伝言なら伝えられますけど」
つぅか、メールすればよくね?
『あっ、ほんと? ……まあ、いっか。あのね、俺今度そっち行くから!』
「……はい?」
『いやぁ、ほんとは凪のビックリした声が聞きたかったんだけど。それは祠稀くんに譲るね。……ほんとは俺が聞きたいんだけどね……』
……親バカってやつか。
落胆してる姿が目に浮かぶ。っても、顔なんか知らねぇけど。