僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
……でもそうか、この人が。
今電話してる人が凪の親父で、彗の問題を解決して、養子に迎えた人か。
想像通り、明るくて、きっと優しい親なんだろう。
「……伝えときます」
『うん、ありがとう! ねぇねぇ、同居、どんな感じ?』
もう電話は終わりかと思ったのに、凪父はまだ話す時間があるようだ。
ちょうどいい。そう思う俺は、傍から見れば悪役みたいに口の端を上げただろう。どう見られようと、俺は本気だけど。
「……楽しいですよ。凪が募集してくれて、ほんとに助かったし」
『そっか、じゃあよかったかな』
「寂しいですか、娘が家を出て」
かかれ。
そう心の中で祈った。
『寂しいよー! まあでも……凪が決めたことだから。仕方ないよ』
俺は一度受話器を持ち変えて、逸る気持ちをなんとかごまかす。
「……凪が家出た理由も複雑ですよね。っても、俺含む奴らみんなですけど」
『……、凪に、聞いたの?』
ほらみろ。やっぱり何かあったんだ。
「まぁ、簡単にですけど」
『そう……話せる人ができたんだ』
心なしか、声のトーンが落ちてると思った。それでも俺は黙り、過去を引き摺り出そうとする。
『凪はね、しっかり者だけど、本当は凄く寂しがり屋で』
知ってる、分かってるそんなことは。
俺が聞きたいのは、そんなことじゃない。
何が、あったのか。それだけだ。