僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


……でもそうか、この人が。


今電話してる人が凪の親父で、彗の問題を解決して、養子に迎えた人か。


想像通り、明るくて、きっと優しい親なんだろう。


「……伝えときます」

『うん、ありがとう! ねぇねぇ、同居、どんな感じ?』


もう電話は終わりかと思ったのに、凪父はまだ話す時間があるようだ。


ちょうどいい。そう思う俺は、傍から見れば悪役みたいに口の端を上げただろう。どう見られようと、俺は本気だけど。


「……楽しいですよ。凪が募集してくれて、ほんとに助かったし」

『そっか、じゃあよかったかな』

「寂しいですか、娘が家を出て」


かかれ。

そう心の中で祈った。


『寂しいよー! まあでも……凪が決めたことだから。仕方ないよ』


俺は一度受話器を持ち変えて、逸る気持ちをなんとかごまかす。


「……凪が家出た理由も複雑ですよね。っても、俺含む奴らみんなですけど」

『……、凪に、聞いたの?』


ほらみろ。やっぱり何かあったんだ。


「まぁ、簡単にですけど」

『そう……話せる人ができたんだ』


心なしか、声のトーンが落ちてると思った。それでも俺は黙り、過去を引き摺り出そうとする。


『凪はね、しっかり者だけど、本当は凄く寂しがり屋で』


知ってる、分かってるそんなことは。


俺が聞きたいのは、そんなことじゃない。


何が、あったのか。それだけだ。
< 405 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop