僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
『だから、凪が家を出ると言った時は猛反対したんだ。……でも、凪がそれで幸せになれるなら、どこか拠り所ができるなら、そのほうがいいと思ったんだ』
「……拠り所?」
『そう。……凪は今、恋はしてるかな。彼氏はいる? もう……報われない恋はしてないかな?』
……バレたのか?
既婚者と関係を持ってたことが、父親に。
「あの……それっていつの話ですか? ……知った時、怒んなかったんすか?」
無言と機械音。
初めての会話なのに、あんまり踏み込むのは失礼だと分かってても、ハッキリしない凪の過去がもどかしい。
ほんの数秒の沈黙は、『うーん』という悩ましい声で破られる。
『凪が中2の頃かなぁ……。怒るとかは、しなかった。できなかったって言ったほうがいいかな。ほら、俺、親バカなんだよねぇ』
「はぁ……まぁ、なんとなく想像つきます」
『あっはは! やっぱり?』
ケラケラ笑う凪父に軽く笑い返して、俺はもうハッキリ聞くことにした。
聞いて、教えてくれるんなら有難いことこの上ないだろ。
「あの、失礼だとは思うんすけど……凪が家出る前にあったことって、それだけですか? ……何か他にあったとか。病気したとか」
『ん? ……凪、元気なかったりする?』
「……まぁ、たまに?」
『そう……』と、何か考えるように凪父は口を閉ざした。
俺も黙っていると、微かに『そーすけさんっ! いつまで電話してるんですか!』と、若い男の声が聞こえた。
『あらら。怒られちゃった』
チッと、心の中で悪態をつく。
聞きたいことの半分も聞き出せてねぇじゃんよ。