僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


『あーっと、祠稀くん?』

「はい」

『凪のこと……見ててあげて。欲を言うなら、支えて、守ってあげてほしい。凪は全部、ちゃんと話してないんだよね? ……でも、焦らないで。凪が元気ないところ見せるなんて、心許してる証拠だから』

「……は、い」


そう答えると、息使いで微笑んだのが分かった。


『俺は、何もできないから。妻いわく、女心が分かってないらしいからね。失礼だよねぇ? ……っと、じゃあ長々とゴメンね! 有須ちゃんにもよろしく言っといて! 会えるの、楽しみにしてるよ』


部下か何かなのか、「そーすけさんー!!」と呼ばれながら、相槌を打つ暇もなく、電話は慌ただしく切れた。


俺は暫く受話器を見つめて、元に戻す。


「もしかして、凪のお父さん?」

「ん。有須にもよろしくーって。なんか、今度こっち来るらしい」

「え、どうして?」


有須からココアの入ったマグカップを受け取り、ソファーに向かう脚を止める。


「……さぁ? 聞かなかったわ、それ」

「……祠稀、凪のことばっかり聞くのに必死すぎだよ」


それはどうもすみませんね。


「どうせ仕事のついでとかだろ」と言い、ソファーに座る。人ひとり分あけて隣に有須が座り、俺は熱いココアを口に含んだ。


「……凪が家出たの、バレたからっぽい。親バカだから怒れなかったとか言ってたけど」

「え!? ……親バカなら怒るんじゃないの?」

「俺もそう思ったけど、なんか怒るタイプじゃないっつーか。溺愛タイプ? 彗のこともあるし、なんつーか優しさでできてますって感じしね?」


有須はマグカップを両手で包みながら、「そうかも」と呟く。
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