僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


◆Side:有須



「驚いたよ、まさか日向さんの息子さんから電話がくるなんて」


午後3時。マンションの最寄り駅から電車を1本乗り継いで、あたしと祠稀はカフェにいた。


並んで座るあたしと祠稀のちょうど中間、向かい側の席に座るのは早坂さん。もとい、サヤさん。


くせのある黒髪を耳にかけて、体のラインが分かる薄手のグレーのニットは、サヤさんの筋肉質な体を強調していた。


男らしい。大人の男の人という感じが、全体から醸し出されている。


「電話でも言ってたけど、お母さんのことじゃないんだよね? ……凪、の、何が知りたいの?」


にこりと笑顔を向けてくるサヤさんは、あたしの予想とは違う性格らしい。


首元にぶら下がる厳ついネックレスもそうだけど、穏やかだとか、優しいだとか、そんな言葉は当てはまらないような気がした。


「病院とはずいぶん違う印象っすね、せんせー」


祠稀も同じように思ったのか、サヤさんはきょとんとすると、おもむろに破顔一笑した。


「ここは病院じゃないし……ただの男でしょ。俺も祠稀くんも、今は?」

「「……」」


祠稀が電話を切ったあと、チカはものの数十分でサヤさんの携帯番号をメールで送ってきた。


祠稀はすぐにサヤさんに電話をかけ、


『凪のことで話があるから会いたい』


とだけ言うとサヤさんは分かったらしく、このカフェを指定してきた。祠稀はどんな手を使ってでも凪との関係をやめるように言うつもりらしい。


「サヤさんてさ、結婚してんだよな?」


いきなり!?


驚きから祠稀を見ると、真剣な横顔に息を呑む。
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