僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「参ったな、そこまで知ってるの?」
「ふざけてんの?」
……祠稀は、本気なんだ。
凪を想って、サヤさんとの関係をやめさせたくて、それで、自分のほうを見てほしいんだ。
……あたしに、そこまでの行動力はあるかな。
「結婚してんのに、凪と関係持つとか意味分かんねぇよ。奥さんに悪いと思わねぇのか」
「それは、凪にも言えることだよねぇ」
「……あぁ?」
おちゃらけたような話し方にイラッとする祠稀に構わず、サヤさんはテーブルに肘を乗せて、絡めた指の上に顎を乗せる。
まるでカウンセラーの人みたい。これから子供を窘めるような、あたしたちの心を見透かすみたいに微笑んで、サヤさんは口を開いた。
「俺は凪が好きだし、凪も俺が好きだ。……俺に電話してきたってことは、知らないわけないよな?」
「っだから、結婚してるアンタが凪と関係持つってのが許せねぇって言ってんだよ」
「ああ、分かってないんだ。奥さんに言うぞとでも、脅すつもりだった? ……意味ないけど」
フゥ、と息を吐いたサヤさんは、コーヒーカップに手を添える。
……意味ないって、どうして? 分かってないって、何が?
サヤさんは珈琲をひと口飲むと、今度は真面目な表情をしてあたしたちを見据えた。
「凪は、サヤがいなきゃ死ぬよ」
「「……」」
大袈裟だと、笑い飛ばせる自信がない。
あたしたちが凪のことを分かっていない理由と、脅しは効かないと言う理由が、それだから。