僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「奥さんに言いたきゃ言えばいいよ。凪に、心の底から嫌われる覚悟があるなら。凪が、死んでもいいならね?」
「……アンタはじゃあ、凪に死なれちゃ困るから抱いてるっつーのかよ」
「それはもちろん。死なれちゃ嫌だ。好きだからね」
……頭が痛い。
凪が好きなら、奥さんと別れたらいいんじゃないの? そしたら、凪は幸せなんじゃないの?
「意味分かんね……」
「そう? ……ああ、奥さんと別れない理由? 愛してるからね。凪も望んでないし、……それに、子供もできたし」
頭を、鈍器で殴られたような。
胃に、ズドンッと重量のあるものが落ちたような。そんな感覚を覚えた。
目の前のサヤさんに対する怒りよりも、凪の心中を考えてしまう。感じてしまう。
「そんなの……凪が、つらくないわけない……っ」
凪は好きで、奥さんは愛してる? 子供ができた? ふざけてる、凪をばかにしてる。
「凪は、絶対サヤさんと一緒になりたいに決まってる!」
奥さんと別れてほしいって、自分と結婚してほしいって、思ってるに決まってる。……でも凪は、優しいから。言えないだけに決まってるんだ……。
「……これって、俺が泣かせたことになる?」
「あたりめぇだろ!!」
俯いて泣くあたしの頭に手を置いて、祠稀は下へと押してくる。
涙なんて見せたくない。
こんな人に、悔し涙を流すなんて腹が立つ。
どうしてこんな人が好きなの、凪……。