僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「アンタと凪の関係ってどういう経緯? それを教えてもらわないと、俺らも困る」
緩く頭を撫でていてくれた祠稀の手が離れ、あたしは鼻を啜ってから顔を上げる。
相変わらずサヤさんは飄々としていて、なんの悪びれもしてない様子だった。
「凪が中学の時に病院にきて、診察してからだけど?」
「……診察? アンタ、凪の担当医だったのか?」
「あ、悪いけどその話はできないよ。仕事上無理。それがなくても、凪に怒られる」
珈琲を飲むサヤさんから視線を逸らし、祠稀と目を合わせる。
……やっぱり凪は、昔何かの病気だったんだ。
「あ、ちなみにもう平気だから。いらぬ心配しなくていいよ」
ついでに付け足したような言い草に、あたしも祠稀もムッとする。そんなあたしたちを見て、「怖いなぁ」と絶対思ってないことを言うサヤさん。
「つぅか、患者と医者で、いつから関係持ったんだよ」
「今の奥さんと付き合い出した頃かな? 凪に迫られて」
……あ、あっさり浮気したってこと?
信じられない。というか、凪が迫ったって……。
「凪、今でこそスパイラルヘアでキツめ美人だけど、昔から綺麗だったからね。中学の時にはもう、女の体だったよ」
二重にしては細めの瞳をよりいっそう細めて、サヤさんは笑う。
嫌悪感。
悪いけど、それしか感じられない。
祠稀はあたしよりもそう感じてるはずだ。
好きな女の子が、中学の頃から目の前の人に抱かれてたんだと聞かされてるんだから……嫌に決まってる。