僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「超、憂鬱なんですけど」
祠稀とマンションへ帰ると、凪と彗がリビングで話していた。靴があったから分かっていたけれど、ふたりのあまりのふつうさに驚く。
「……おかえり」
「……」
「あ、た、ただいまっ!」
祠稀の無反応に、代わりに返事をする。彗は微笑みを向けてきて、凪はテーブルに頬杖をついて眉を寄せていた。
「何ブスッとしてんだ、お前」
「あー、おかえり」
カーペットの上に座ってるふたりに祠稀は近付いて、ソファーに座る。
あたしは上着を脱ぎながら、テーブルの上にある赤と黄色のマグカップを見下ろした。
「あ、飲みもの淹れてこようか。祠稀は何飲む?」
底にわずかに残ってる水分を見て、凪はココアで彗は珈琲だと分かる。祠稀は「ココア」と振り返り、凪は「ありがとう」と言うから、あたしは頷いた。
「じゃあ淹れて……」
「手伝う」
見上げた時にはもう、彗はふたり分のマグカップを持って立ち上がっていた。
「……手伝うよ?」
「え! あ、うんっ! ありがとうっ」
そう答えると、彗は微笑んでキッチンへ向かった。その背中を追いかける脚が、少し重い。
……なんだか、普通のような、そうじゃないような。意気込んで帰ってきたあたしと祠稀には少し、拍子抜けしてしまう雰囲気だ。
「やー! 痛い! 何すんの!」
彗とキッチンに並ぶと、凪が祠稀に頬をつねられていた。
そういえば凪、憂鬱だと言っていたけど、どうしたんだろう。