僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「はぁっ……ひっ、く、……っ」
苦しい。
「! 凪っ、バカ……ッ」
呼吸が苦しくなったと思ったら突然肩を掴まれ、押し倒される。
「両手で口塞いでゆっくり呼吸してろっ!」
無理やり両手を口に宛がわれて、早坂先生が視界から消えた。
ガタガタと遠くで音がして、ああもしかして過呼吸かなと思ってる内に、紙袋が目に入る。
「……ゆっくり、落ち付け。いつも通り呼吸しろ。大丈夫だから」
目尻を伝って涙が落ちると視界が明瞭になって、早坂先生の顔を見ることができた。
いつもと変わらない表情。だけど、どこか悲しみを帯びた視線が、あたしの肌をちくちくと刺す。
「先生……」
紙袋の中に吐き出された声は、あたしの耳にもくぐもって聞こえた。
「あたしは頭がおかしいのかな」
「イカレてるんじゃない」
グシャッと握り潰された紙袋が、早坂先生の手によって綺麗な弧を描きゴミ箱へ捨てられる。
「――って言ったら、お前は楽になるんだろ」
そうだね。きっと、ああやっぱりねって納得はすると思う。
だけどね、胸にぽっかりと開いた穴ができるの。真っ暗で底が見えなくて、埋める方法があるのかなって思うくらい大きな穴。
それが埋まれば多分、あたしはふつうになれそうな気がするの。心から、笑える気がするの。
「愛されたい」
べッドに腰かける早坂先生が、寝転ぶあたしをなんとも言えない表情で見下ろしてくる。
じわりと胸の奥から何かが滲み、あたしは早坂先生の腕に触れた。
温もりを感じて、脈を感じて、何より至近距離に人がいることに安心する。
それだけで涙が浮かぶあたしは、どれだけ寂しがりなんだろう。
「お願い先生。寂しいの。愛されたいの。……カウンセラーなら、どうにかしてよ」
――もう本当に。
あたしは誰かの温もりがなければ、生きていけない気がした。