僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
始まりはいつだったか。
確か、雨ばかり降っていた頃だった。
桜も散って、毎日毎日曇り空。どんよりとした空はあたしの気分も落ち込ませて、打ち付くような雨も体を芯から冷やした。
学校でも家でも心は晴れなくて、張り付けたような笑顔を絶やさず、いい子を演じ続ける毎日だった。
たったひとり、早坂先生の前だけは除いて。
「無理、ダメだ」と抱いてはくれなかったけれど、何も言わず隣で寝てくれた。
それがなぜ、中2の梅雨に早坂先生が折れたのか。理由は至極簡単だった。
眠剤を大量に飲んだあたしに、同情したから。
……迷惑な話だ。人様の家で自傷癖を出すなんて。
死ぬつもりはなかった。
ただ毎日苦しくて、その痛みを別のものにすり替えたくて。
自分の首を絞めてみたり、腕に爪を立ててみたりもしてたけど、直接的なものは向いていなかった。
だから、最中に痛みもなくて、中途半端に苦しまないもので身近にあった眠剤を選んだ。
致死量には至らないだろうって程度に、眠剤を飲んだだけ。
気持ち悪くなって、トイレで吐き続けて。確かもう胃液しか出なくなった時、早坂先生が帰ってきた。
その時のことはあまり覚えてないけど、次の日こっぴどく怒られたのは覚えてる。
「ごめんなさい」
そう言いながら怒られて嬉しそうにするあたしに、早坂先生は確かに哀れみの表情を浮かべていた。
眠剤を大量に飲む前から、自傷癖が出ていたあたしを恐れていたとも思う。
始まりはなんでもよかった。
同情だろうが何だろうが、その心に、あたしがいるなら。
やろうと思えばできたのに、同級生でも上級生でもなく、初めての相手に早坂先生を選んだのには理由があった。
それを言うつもりはなかったのに、彼は難なく当ててきたんだ。