僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
『俺の名前、知ってるか?』
―――はやて。
『当たり。そーすけサンと一緒』
早坂 颯。
“はや”が続くから名前を名乗ることが嫌いで、苗字で呼ばれることが多いと言っていた。
『サヤって呼びたいんだろ』
正直、漢字が一緒だと頭の隅にはあったと思うけど、そこまで考えていなかったのが本当。
あたしはただ、サヤに求めるものを代わりに早坂先生に求めていたから。
『呼べよ。俺をサヤだと思えばいい』
それをすんなり受け入れたあたしもよっぽどイカレてるけど、提案してきた早坂先生も相当イカレてると思った。
そうまでしてくれたのが同情ではなかったと、後々気付いたのだけど。
あたしと同じで、早坂先生も叶わない愛を知ってしまった。
どうにかあたしを救い出そうと。同時に、自分を愛してほしいと。
哀れなふたりは肌を重ねるたびにたくさんの願いをしたけれど、どちらの願いも叶わない。
早坂先生とセックスしてからというもの、味を占めたと言ったらおかしいかもしれないけど。
早坂先生の願いも虚しく、あたしは快楽を知ったことで飢渇に苦しんだ。
満たされた心が渇くことに、愛に飢えることに何より恐怖を感じたから。
男と女の遊戯は気持ちよかった。終始温もりを感じられて、相手はあたししか見ていなくて。
名前だって呼んでくれる。キスだってしてくれる。肌を息を重ねて、その全てが愛しさを含んでいた。
もっとも、体目当てだけの男もいたけれど。結局あたしにとってはそれも“愛”に当てはまるんだ。
求められること。それが何より心の穴を埋めた。
気付けばあたしは早坂先生以外にも相手は複数人いて、彼氏も作ったりした。
求めてほしい。ただその欲のためだけに。
それがエスカレートするにつれ、あたしは必然的に家へ帰るのが遅くなり、帰らない日々が続いたこともあった。
きっとこの頃のあたしは、誰から見ても素行不良だったと思う。