僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「凪……」

「っ! 待って、違うからホント! 言い方が悪かった、ごめんなさい!」


焦るな。

そう自分に言い聞かせて、学校の試験の時より頭を働かせた。


決めたじゃない。あたしはサヤに恩返しするんだと。家族を大事にするって、サヤの幸せを願うって、決めたんだ。


「彼氏ができたの。久美の彼氏とも仲良くて、一緒に遊ぶの楽しくて……サヤが放任主義だからって、調子に乗り過ぎた。ごめんなさい」


気付かれてはいけない。あたしの想いなど。


「えーと……ちゃんと家にいる。泊まる時も、連絡する。家事もやってから遊びに行くね」


あたしは考えるふりをして指折り数えながら、自然にサヤの横を通り過ぎる。


「ていうか、緑夏ちゃんだって仕事で疲れてるのに……ごめんって言っといて」


キッチンを出て振り向くと、サヤは緩く首を振った。


「凪、そうじゃない……」

「ほんとゴメンね! お風呂入って朝ご飯作るからっ、サヤは寝てて!」

「凪っ! それじゃまた……っ」


聞こえないふりをした。何を言われても、今はうまく返せる気がしなくて。


さっきみたいに、感情に任せて言ってはいけないことを言ってしまいそうで。


サヤの悲しげな表情を見て見ぬふりして、あたしは恐怖を感じながら笑顔でリビングを出た。




それからのあたしは家にちゃんと帰るようになった。誰かと肌を重ねることも、泊まる回数も減った。


それは緑夏ちゃんが来た頃のあたしに戻ったということで、案の定、我慢ができなくなっていた。


薬で言う、副作用みたいに。


いい子のふりをする分だけ、家族を大事にしようとする分だけ。サヤへの愛情が増えて、緑夏ちゃんへの嫉妬が大きくなる。


想いがバレそうになって。でもバレてはいけなくて。自分を抑制して、周りを騙して。


そんな生き方は気が狂いそうで、限界などとうに越していた。


それでもあたしは、心が擦り減るのを代償に、サヤの幸せをいちばんに願ったんだ。
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