僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――――
――――――…


「……」


目を開けると、部屋は暗かった。天井を見上げて自分の部屋じゃないと知る。


彗が、床に座ったままベッドの端に顔を伏せていた。


そうか、昨日あたし……死ぬつもりで眠剤を飲んだっけ。


思い出しても、苦笑しか出てこない。


きっと彗は、あたしが起きた時にまた薬を飲まないようにと思ったんだろう。


あの小瓶に溜めていた眠剤を捨てたなら、もう一粒も持ってない。


あるとすれば、財布の中に2錠。それで死ぬのは無理な話だ。


ベッドにうつ伏せる彗の髪に触れ、暗闇に目が慣れる暇もなく気付いてしまった。ブラックライトの照明が、彗の手首を照らしていたから。


他の傷とは比べものにならないほど細くて短いけれど、確かに切った痕がある。


胃が、ぎゅうっと捻じれた気がした。


「……っごめん……」


今のあたしには、それしか言えない。


……彗。きっと君は、起きたらいつも通りでいてくれるんだろうね。


何事もなかったかのように微笑みを向けてくれるんだって、分かるよ。


ごめんね。

何回謝ったって、足りないけれど。



なるべく音を出さないように布団から出て、彗の部屋を出る。


少し胸やけがする。


ドアを閉めて溜め息を吐いた瞬間、視界の端に光を捉えた。


カーテンが閉まるその奥から、淡い光がベランダの左側だけに形を作っている。


……祠稀。4時半なのに、まだ起きてるのか。


「……」


少し考えて、あたしの足はベランダに向かった。カーテンをめくり解錠すると、開かれたドアから風が入り込み肌を撫でる。


もう冬だ。そう感じさせるには事足りるほど冷たい空気。



「……よお」


そう声をかけてきた祠稀の鼻も頬も赤くない。煙草を持ってる指先すらも。


あたしが起きたのに気付いて、こうしてベランダに出てきたの?


「……寝てないの?」

「寝れねぇだろ、考えることあり過ぎて」


……ああ。やっぱり彗、話しといてくれたんだ。

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