僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「俺たちのことは助けといて、自分の時は助けがいらないなんて勝手な話だな」
「……」
祠稀は早坂先生に。有須は緑夏ちゃんに。初めて会った時は似てると思った。彗は、彗のままだったけれど。
「祠稀。あたしは助けようと思ったんじゃないよ。ただ一緒にいてほしかったから、あんなに必死だっただけ」
「どうでもいい。お前の言うことなんて信じねぇし」
怒ってる、のか判断しづらい。
ベランダの柵に肘を付き、夜景と言えるほど灯りはなかったけれど、真っ暗な景色を眺める。
斜め後ろでは祠稀が、窓に背を預けて煙草を吸っている。
「俺は、俺だけ信じる」
「……あたしにはもう、騙されないってこと?」
「違う。俺は、俺が見て知った凪しか信じねーってこと」
「ははっ! 意味分かんないよ。あたしの言うことは信じないんでしょ?」
笑って振り向くと祠稀は地面に視線を落としていて、紫煙を闇夜に交わらせていた。
祠稀の部屋から注ぐ明かりが、その背を照らして逆光になる。
普段黒く見える髪はやっぱり蒼くて、綺麗だと思った。
「……助けるつもりがなかったとしても、俺はお前に救われたよ。ただ一緒にいたいだけで俺に怒鳴ったんだろ? そんなもんで充分なんだよ、理由なんて」
「変だよそれ。勝手な解釈」
「そうだな。だからお前が何を言おうが、俺は自分で感じたことしか信じねぇって言ってんだよ」
「……彗の話、ちゃんと聞いてた?」
「聞いたし、彗のこと殴ったけど。何か問題でも」
殴っ、た? そこまでしたなら、分かってるんじゃないの?
あたしは祠稀にも有須にも、頼りたいと思ったことなんてないって。
「……分かってないのか」
「は?」
煙草を揉み消す祠稀はその手を止めて、僅かな怒りを含んだ瞳であたしを見た。