僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「俺たちのことは助けといて、自分の時は助けがいらないなんて勝手な話だな」

「……」


祠稀は早坂先生に。有須は緑夏ちゃんに。初めて会った時は似てると思った。彗は、彗のままだったけれど。


「祠稀。あたしは助けようと思ったんじゃないよ。ただ一緒にいてほしかったから、あんなに必死だっただけ」

「どうでもいい。お前の言うことなんて信じねぇし」


怒ってる、のか判断しづらい。


ベランダの柵に肘を付き、夜景と言えるほど灯りはなかったけれど、真っ暗な景色を眺める。


斜め後ろでは祠稀が、窓に背を預けて煙草を吸っている。


「俺は、俺だけ信じる」

「……あたしにはもう、騙されないってこと?」

「違う。俺は、俺が見て知った凪しか信じねーってこと」

「ははっ! 意味分かんないよ。あたしの言うことは信じないんでしょ?」


笑って振り向くと祠稀は地面に視線を落としていて、紫煙を闇夜に交わらせていた。


祠稀の部屋から注ぐ明かりが、その背を照らして逆光になる。


普段黒く見える髪はやっぱり蒼くて、綺麗だと思った。


「……助けるつもりがなかったとしても、俺はお前に救われたよ。ただ一緒にいたいだけで俺に怒鳴ったんだろ? そんなもんで充分なんだよ、理由なんて」

「変だよそれ。勝手な解釈」

「そうだな。だからお前が何を言おうが、俺は自分で感じたことしか信じねぇって言ってんだよ」

「……彗の話、ちゃんと聞いてた?」

「聞いたし、彗のこと殴ったけど。何か問題でも」


殴っ、た? そこまでしたなら、分かってるんじゃないの?


あたしは祠稀にも有須にも、頼りたいと思ったことなんてないって。


「……分かってないのか」

「は?」


煙草を揉み消す祠稀はその手を止めて、僅かな怒りを含んだ瞳であたしを見た。
< 559 / 812 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop